2013年8月13日火曜日

カヌーガイド的私小説「CXLとホワイトカーペット」

ガイド業に携わる一人の気ちがい野郎の心模様をば。
言葉になった途端、それらは真実に限りなく近いフィクションに転じるのだけれど、ね。

朝。


諸事情による土壇場キャンセルが何件か発生。
いろいろあるよね、人間だもの。が、予期せずしてフラれるのも、人間だもの、正直つらい。
ぽきり。心が折れる音がした。
電話越しの方が、顔の見えない方が、ダメージは遥かに少なくて済む。
今年は去年より土壇場目前キャンセル発生率が高く、その都度ひとり、下を向く。

どんな支笏も愛してほしい。でもそれは僕の単なるエゴでしかないのだろう。

頭と心の切り替えスイッチは相変わらずのポンコツで、引きずり太郎。
生活や存在までも否定された気になってしまう僕は、大げさだろうか。

‥いや、待てよ。ここ数年の夏の生活・僕の存在意義なんてのはカヌーツアーに出ることによってのみ成立するわけで、そう考えたら「ツアー=僕」、という図式は大げさでもないわけで。


心は四割割増しで突発的超敏感肌化。いちいちすべてが気に障る。
大人しく事務所へ引き返し、頭をからっぽにして品切れ寸前のハーブティー制作。


水上で目の前のお客さまに最大集中するために、事前に陸上で整えている細々とした地味な手間と身体を使うツアー裏での作業。
人数分のSotocafeセット・カヌー運び・ライジャケ・パドル・防水バッグ・イス・テーブル・雨具、受付用紙、サイフ、
‥僕は毎日、今年はPちゃんに助けられつつ数えてばかりいる。

余裕をもって準備を終えて、珈琲を一杯、はたまたしゃぼん玉を一吹きするくらいの時間がないと精神的ゆとりは発生せず、ツアー前に慌ただしくなってしまうと、思い描くイメージの具現化は遠のく。
僕には試したいものがある。つくりたいものがある。

出勤前の朝は、気持ち悪いくらいに毎日同じことをしている。
AM 5:50 ケータイの目覚ましを止めたらパソコンの電源を入れる。お湯を沸かす。Caravanか「ひこうき雲」をかける。味噌汁と納豆と米を食べながら天気をチェックする。昼飯を詰める。アイスコーヒーをサーモスマグに淹れる。あたたかいひしわ紅茶を飲む。服・手ぬぐいを選ぶ。
起床からの一時間で、世界と自分を縫い合わせていく。

つぼみのまま、咲くこともなく終わってしまう花はきっと、声なき声で泣いている、と今は思う。

修行の足りない僕は、途方に暮れるバカり。


 午後から大雨。たまに雷。



集合して、いつもより弱腰でお客さまと相談。

様子を見ながら時間短縮の可能性も示しつつ、とりあえず用心深く漕ぎ出した。
写真には美しさが写っていない気がするけれど、生まれて初めての新しい美しさに遭遇した。


目まぐるしく移り変わる天気。何でか太陽が登場。明るい日差しの中で降り注ぐ雨。

木陰で雨宿りしつつ、川の真ん中を見やると、雨粒が光を浴びてホワイトカーペットになっていた。きらきらと白い輝きを放つ白い未知。六本木のイルミネーションなんかより、ずっときれいだった。


「川の真ん中、見てください。すごい‥きれいです。」



 そのまま雨は退散したので、念願の湖で夕漕ぎ。



一緒に、笑いながら漕いでくれてありがとう。


16:30、晴れ間の中Sotocafe終了。
それから10分後。まさに「バケツをひっくり返した」ような豪雨にツアー終了間際のファミリーカヌー部隊が当たることになるなんて、この写真からは想像がつかない。

「思い出はいつの日も雨~」

水を蓄えたカヌーは重い。片づけにいつもより時間を取られつつ、ジャンクフードで身体を汚したくなり吉野家へ寄ってから自宅に帰り着いたのは20時すぎ。


事件はいつも、千歳川源流部で起きている。too hard day.

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