2016年3月9日水曜日

建前とか人の目


今年。ぼくは氷濤マンではない初めての冬を過ごした。

北国の冬は氷濤。この絶対的方程式に異を唱えたのが、さんざん夏のぼくを振り回した店という存在だった。どうやらこの店は、オレを通年試したいらしい。受けて立った冬。苦しみも喜びも、凄まじい新風が吹き、布団は吹っ飛んでもオレは吹き飛ばされないぞと踏ん張っていたらいつの間にか、できることが馬鹿みたいに増えていた。
店の思惑通りに、ぼくは多分、今、誰よりも店を好きになった、させられた、と思う。

店「意外と骨があるじゃねーか、オマエ」
ぼく『なんだこのやろ。オレを誰だと思ってるんだ。本気になればこんなことおちゃのこさいさいだ。』

見た目はかわいらしいが、非常に小生意気な店だと思う。

氷濤マンはくせ者だらけで、一見こわそうな人だらけだがみんな、本当はやさしい。ガテン系仕事自体は誰よりも向いていないし、似合わないことも自覚しながら、
足りないものを補い合う、あの一貫したマザー・テレサのような博愛精神は何なのだろう、と思う。みんなちがって、みんないい、を体現しているあの制作現場から、今の時代や政治が学ぶべきことは多い。切り捨てるのは簡単だ。


ぼくがぼくであることは何ら変わらないけれど、店長の任を受けてから、ぼくへの評価だったり見方、対応の仕方が色々なところでなんだか少し変わったように感じる。人によりけりでは勿論あるが、「世間」(ごまかしたって人間だろが)というやつは本当に外面ばかり大事にして、くだらねーなあと思う。

見下されなくなった、というかなんというか。

カテゴライズするのもされるのも好きではないが、そういった色眼鏡でしか人を見ない、見れない人間が世の中の大半であり、それにより世の中のシステムが円滑に回っているのも事実。

建前も大事。それも呑み込めるようにはなった。
箱モノに見合う人間に人はなっていく、背負えるよう努めることで、個が成長することも事実。その証拠にぼくは冬を越して少し、しかし、確実に自覚や自信、これでいいのだ感を得たように思う。

分かりやすさは大事なのだろうが、それとは別に、
白と黒の間にあらゆる色のグラデーションが多彩に連なっていることはいつでも肝に命じながら生きたい。
イエスとノーの間、白と黒の間、あらゆる人と人の間を、
分かりやすくない曖昧な間をこそ、ぼくは大事にしたい。
素敵な人は大体が狭間に悶えているから、そういう人が近くにいたら、できるだけのことをしたい。蔑まされる生命はひとつだってない。

なるだけ、形ではなく、その人自体を眺められるメガネをかけてあらゆる人と関わりたい。
お金を持っている人より、人に寄り添える人がぼくには断然魅力的に、写るんです。
お金は目的ではなく手段だと、ベルクの店長も言っている。

水の上で、大事なのは、漕げるかだけ。お金は使い道がない。重たいだけ、かさばるだけ。しがみついても無駄。陸の常識は水の非常識。水に浮かべば、空を飛べる。カヌーは宇宙船。これは支笏だからということもある。
陸での肩書きは無意味。初めて漕ぐならみんな、水平。平等。誰も偉くない。ただ、それぞれに、素晴らしいってだけ。

水の上はこの地球上で最も公正かもしれない。

地球には、これ以上引くところがないほど、あらゆるところに人間が引いた線があり、すべての事柄には優劣や効率がつきまとう。
あくなき所有欲。所有という概念もくだらない。
美しさも幸せも分け合うためにある。
すべては誰のものでもない。
くだらないし、汚いから、ぶっ壊してしまいたいと、いつもぼくなんか思ってる。
くだらない枠に囚われて身動きがとれず苦しむ人をたくさん見たし、いるわけで。
枠なんか、柵なんか、線なんか、常識なんか、当たり前なんか、全部、サヨナラして、もっと身軽になればいい。
何をできるかできないかとか、何を持つか持たないかとか、そんなことはどうでもいいのだ。
ただ、なにができるからとか何を持っているとかそんなあほな濁り梅酒みたいな次元ではなく、誰でもない、なにも持たないそのままのクリアなあなたがぼくは好きなのであり、誰でも、何でもないぼくを認められたいと欲してる。

なんだか、だんだん恥ずかしくなってきたぞ、勿体ないからこのまま更新してしまう術。

愛する石川直樹さん(この人もやはり、父から新聞の切り抜きでもって教えられた)も最新刊『ぼくの道具』の中でこう言っている。

「自分の行動に消去できるものなど、実は何もないのだ。」

で、何やら石川直樹さんは坂口恭平さんのジャケット撮影をしているらしく、その唄を聞いていたら、やたらに「雨」という言葉が多い気がして。
小学生のとき、キョーダイ三人でマンガ雑誌をつくったり、曲をつくったりしていたことを思い出した。
マンガ雑誌は今やまちゅぴちゅとなったが音楽は再開していないから、そろそろ唄をつくろうかと思う。作曲は誰に頼もうか。

デビュー曲の出だしは「今日は雨みたい~♪」で始まる。

長々と失礼しました。





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