2018年4月20日金曜日

熊野で武四郎night

day 2.
車は一台。折り畳み自転車も積んでいない。残るは公共交通機関。
バスの時間に縛られ(たおかげで)、西へ急ぎたい気持ちをなだめられるように熊野の川原で一宿することとなった。

「まあ、そう焦らずに。ここもいいところなのだから、ちょっと休んでいきなさい」

熊野さんになだめられたわけだ。
そうか、北山川は、水の聖地・大台ケ原からだよな。我が師・武四郎さんじゃないか。
大台ケ原は北海道に似ているんだってさ。

ぼくなんざ昨日の朝まで千歳にいたわけで。
日常を捨て、時間軸を越え、旅の空に溶けこむには、のんびりいきなさい、ということか。

夜に飲みこまれる前に火を焚く。


日中は雨も降り、思ったより冷えた。
百聞は一見にしかず。漕がないと分からないことは実に多く、重要。
土地ごとの風。


自分なんざ、たった一つの生物であることを思い出していく。鳥と一緒、魚と一緒。シカと一緒。水と一緒。山と一緒。空と一緒。同じじゃないけど、一緒くた。


土地勘のある隣人はあたたかいお湯を求めて闇に消え、忽然と得た一人の夜。
何か考えたいような、何も考えたくないような。
揺らめく炎をぼんやり見やりつ、片手にはコーヒー‥ではなく現地調達した「ばばあの梅酒 原酒」をお湯で割る。

器用でない。あれもこれもできない。のめりこむしかできない。盲目的に取り組むしかできない。オタク街道まっしぐら系である。よきも悪きも、必殺技は弱点ともなる。何かやると何か失う。この三年間は必然的に立ち位置的に、ガイドとして引いた時間帯であり、コーヒーや店を守ることが何より大切だった。なさそうだった責任感が芽生えたことに驚きつつ使命感に陶酔した。
去年のぼくならきっと、遠征も断ったろう。
でも、結局、今度はこうして美しい水が呼ぶ方へやっぱり、流れる。

帰ってきたよ。おかえりなさい。離れたおかげでまた出会えたね。
はて。ぼくはこの夜、誰と会話をしていたのか。
人じゃない者との会話の方が向いている気がする今日この頃。

カヌー。やっぱり、宇宙船。

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