白い世界の中で、漕いでは歩き、走っては滑ってと、この頃のぼくは珍しく貪欲モード真っ只中にある。
冬はいつまでも続かない。ぼくはやけに焦っている。
変な話だ。
季節が移ろわなくとも、年中、何だって‥自分自身も、いつまでも同じままではいないわけではないか。それでも何となく、四季というものがあることで、よりいっそう人の世の諸行無常っぷりは助長されているように思う。
千歳川が好きなカヌー乗りは何度もお店の前を通っているだろう。
いつもいつも風変わりな佇まいが気になりつつも、周囲から「行ったよ、良かったよ」なんて声も聴きながら、何となーく、いつでも行けるからとまた今度また今度と後回しになっていたお店。
カウンターの前は大きな大きな窓があり、窓越しにどどんと広がるは、白い世界。
あたたかいところから降りしきる雪を眺めるのは最高にいとをかし、ですだよ。(もんじゅくん風味)
視線を落とすと双眼鏡。
‥お、おおお?
なんと、冬ならバードウォッチングをしながらお茶を楽しむことができる仕組みらしい。
言っているそばから、ゴジュウカラやらアカゲラやらがやってきた。
聞き慣れない銘柄の中国茶を本格的様式で飲みながら白い世界で戯れる小さな友人たちを見やる。ありそうでない取り合わせの妙たるや。
本格の中国式コップはエスプレッソ用並みの小ささで、ちびちびと楽しむものであるらしい。
それはきっと、みんなで分け合うための小ささなのだろう。
分け合うこと。今の時代のキーワード。
「自分」と「ヒト」の境界がなければ、「所有」という概念は無に帰す。
「所有」が消失すれば、奪い合う必要もなく、誰かの笑顔が自分の幸せに、誰かの涙は自分の痛みになる。
なんだか、『幸福な王子』を読み返したくなった。
0 件のコメント:
コメントを投稿