なにしに生れてきたと問はるれば、
躊躇なく答へよう。反対しにと。
僕は、東にゐるときは、
西にゆきたいと思ひ、
金子光晴『反対』。
本当に。何でも、とにかく、反対へ、反対へ恋焦がれてしまう。
休み。
起き抜けに何でかあの子ではなくあいつに電話した。
ぼくは好きな人の起きたての整っていない声を聴くのが好きだ。疲れてけだるい声なんかもセクシーだと思う。好きな人ならどんな声でもいいのだろうか。声がいいから好きなのだろうか。
たった一音、「ね」だけで嘘か本当か、愛か夢か、全部分かる。
今年はそれほど電話をしなかった。ま、相変わらず話は長いし脱線ばかりでオチはないし自分からは切らないけれど。
ま、ぼくの相手はどうしたって疲れるだろう。電話でも面倒臭がられる。が、本当に面倒臭かったら最初から相手にしてくれないに決まっている。
ぼくのまわりの人は「面倒臭い」と言うのが好きなのだろう。ぼくは「面倒臭い」と言われるのが好きなのだろう。需要と供給。世の中うまくできている。
面倒くさいのを引き受けてくれる人を、ぼくはいっとう大事にするよ。そうなると、この世界から嫌いな人はいなくなる。
二十代の半分。相変わらず気は多いけれど、「あの頃みたいな恋はもうできないんだろうな」なんてあいつが爽やかさの欠片もない声で言っていて、どうしてぼくは朝からかわいさの欠片もないやつの声を聴いているんだろうと思いながら相槌を打っていた。
もうさ、「新しい友だちとかいらない」、「分かってもらわなくてももう足りてるもんね」とか。
いつ出会うかは大事だ。いちばん情けないときをお互いに知っていると、背伸びをする必要がない。背伸びせずに、背が曲がってもそばにいる人はもう変わらない。心の問題。
ちょうど三週間前にやった中耳炎は、まだかさぶたがあるから聞こえが少し悪いけれど、あとは時間に任せれば良しと言われた。
お気に入りの「ほかほか弁当」の唐揚げ弁当を買って、冷めた世界一のきゃろっとブレンドのコーヒーを持って、クレイジークリークのヘクサライトオリジナルチェアを取りに帰り、いつもの場所に行ったら釣り人がいたのでスポーツセンターすぐのところで日光浴。
近所に清流がある暮らしというのは、最高の贅沢だと思う。
隣に君の笑顔があった日にはもう、ぼくなんか死んでもいい。草っぱらと珈琲とかわいい君とぼくと太陽と清流と秋のシャンとする澄んだ空気と空の青。
この川のそばにいたいと、素直に思う。
この水が支笏から来ているというのもいい。この水が日本海まで流れていくのもいい。轟音ではなく、さらりと軽快な音がいい。ああ、恋‥漕いでも漕がなくても、千歳川が好き。
釣りをしなくても口笛を吹けなくても、ぼけーっと寝転がって鼻歌を口ずさみ、気が向けばしゃぼん玉を吹いてみたり、唄をつくったり、寝そべって目を閉じる。
この時間は何だ。何もなくてすべてがあり、足りないから満ち足りていて、不完全で完璧なこの時間は、何だ。
ぼくは「すごい」と思わない人のそばにはいられない。いたくない。すごくない人と過ごす時間で生まれるものはすごくないものだ。
ぼくがすごいと思う人は皆ぼくを大切にする。
ぼくは大切にされたがりで、大切にされないと生に固執できなくなる自分を知っているから、それを防ぐために、生き延びるために「すごい」にこだわる。誤魔化したら痛い目に遭う。すごくない人はぼくを殺す。
お高く生きるのだ。安売りセールはしないのだ。頭を下げるためにわざわざ生まれてきたわけじゃないのだ。
「すごい」は、信頼だ。「すごい」は信用だ。「すごい」と心中なんてことになったらそれは仕方がない。このぼくが認める「すごい」人とでもダメだったなら他の誰がやってもそれは失敗するに決まっている。
それぐらいの確信的覚悟が、「すごい」だ。
今ぼくがここにいるのは、naokiさんを、naoさんを、カヌーを、支笏を、北海道を、すごいと思っているから。
昨日読んだすごい本は言っていた。
早川義夫『たましいの場所』
そう、すごいと思いっぱなしのぼくもまたすごいのだ。
すごいぼくは冬のことを唐突に考え始めた。何にこだわりたいのか、「場所」なのか、「好き」なのか、「人」なのかと、草っぱらで考えていた。答えは簡単、「君」だろう。
いや、「ぼくがぼくであるために」のみ、ぼくはこだわっているのか。尾崎豊。
すごいぼくが行くことになる場所は、今はさっぱり見当がつかないけれど、どこもすごいし、そこにいる人もすごい。このブログを読み解こうとしているあなたも勿論すごい。
いつも、すごいありがとう。あなたのおかげで独りよがりではなくなるのです。
すごいと誰かに思われるより、すごいと誰かを思っていたい。
すごいとぼくに思うより、すごいとぼくに思わせて。
すごく、好きな人がいる。
すごく好きな、まだ見ぬ人もいる。
通算何回すごいと言ったろう。‥「太陽とシスコムーン」か。(『Magic Of Love』より)
ではまた明日。
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